自動車市場にまで価格破壊のトレンドが、とニュースにあった。

食べ物は業務スーパー、外食なら吉野家、衣服はユニクロにしまむら、文具や雑貨はダイソー。価格破壊のトレンド、とは書いたものの既に私の生活の中では価格破壊は「トレンド」ではなく日常となっている。そんな中、自動車だけは「価格破壊」の蚊帳の外であると思っていたが、フォルクスワーゲンなんてメジャーなメーカーから50万円前後なんて中古車なみの超低価格車が発売されるらしい。

多くの商品/市場で、低価格の商品が幅を利かせ、高価格商品との二極化が進んだ。だが自動車については、高級車ブランドが車格の低い車をラインナップすることはあっても、「価格破壊的な車」が出ることはなかった。でも、これを契機に海外各メーカーや国産車メーカーにも同様の戦略的商品が出てくるんだろうね。

さて不動産の業界はどうか? 新築分譲についてはあまり価格破壊は進んでいないですね。確かにマンションや一戸建ては安くなったが、土地価格の下落によるところが大きく、マンションの建築費はバブル以降上昇や下落を繰り返しており決して「価格破壊」とはなっていない。ただ一戸建てについては、いわゆる「ビルダー系」といわれる業者が廉価な住宅を建築するようになっており、マンションよりは「価格破壊」の様相だ。

一方、賃貸市場は価格破壊が進んでいます。当然、人気のあるエリア/物件は下がるどころか上昇しているものすらありますが、贅沢言わなければあきらかにお得物件が増えている。そしてこのトレンドは今後どんどん進むでしょう。

価格破壊が進む理由としては「海外生産による人件費の抑制」「技術革新によるコストダウン」といったことが主な理由だが、賃貸市場の価格破壊が進むと考える根拠は「需給のミスマッチ」と「供給者の規模」にある。

まず「需給のミスマッチ」。これは簡単。新築住宅が建築されていくペースは、既存住宅が解体されるペースよりも早くこの状況がすぐに変わるとは思えない。そんななか人口は減少トレンド。建物が増えて住む人が減れば、当然、賃料は下落していく。

もう一方の「供給者の規模」。賃貸住宅には、個人もしくは極小規模な事業者が保有しているものが多くあります。「賃料を下げるくらいなら空室のまま放っておく」ような余裕のあるオーナーもいるが、賃料収入が滞るとローン返済や運転資金に困るオーナーも多数いる。自身が購入したマンションが転勤等で利用できなくなり住宅ローンを抱えたまま賃貸に出している分譲貸しオーナーなんかも同じ様な境遇といえよう。

このようなオーナーが、賃料を下げて市場に出すと、周辺の相場はそれにつられて下がる。大規模マンションの分譲貸しなどは、この傾向が強い。またこのような状況で、余裕があるから空室でおいていたオーナーが、一気に相場に合わせて価格改定をしたりすると、完全に負のスパイラルだ。

そんな状況の賃貸市場なので、今後賃貸を借りようとしている人は「駅から遠目(15分〜20分)」「大規模なマンション」を狙えば、きっと有利な交渉ができるだろう。では賃貸オーナーはどうすればよいか? これについてはまた別の機会に書いてみたいと思う。